何のために、どのように「内定者フォロー」を行うか

「内定辞退」の防止策として必要になるのが「内定者フォロー」だ。御明さんは、「何のために、どのように『内定者フォロー』を行うのかが重要」とセミナーで説き、企業で行われている「内定者フォロー」の手段をモニターに映した。アンケートの回答でいちばん多かったのが、「内定者懇親会」だ。

御明 「内定者懇親会(の開催)」が増えたのは、コロナ禍が収まってきたことが大きいと思います。

 現在(いま)の学生たちは、「Z世代」と言われていますが、「Z世代」に括られるのはかなり幅広い層で、全体的な傾向はあるものの、その価値観は多様です。ですから、内定者一人ひとりの個性を知るために、きめ細かなコミュニケーションをとる必要があり、懇親会のような場作りが重要になってきます。

 内定者である学生たちも、横のつながりを求めているようです。これまでのコロナ禍によって、リアルな対人関係や交流経験が不足しているからかもしれません。同期のつながりは、内定辞退や入社後の早期離職の防止にもなり得ます。その観点からも、内定者懇親会は有効的だといえるでしょう。 

 内定者フォローの手段として、他には、「採用担当者との個人面談」「先輩社員への訪問と懇談」「内定者研修」といった回答があがっている。これらは、「企業と学生がリアルで対面できるようになったことと、自社のことを知ってもらおうという企業側の姿勢の表れ」だと、御明さんは分析する。

 また、セミナーでは、内定期間→新人研修→現場配属→見習い→一人前→中堅……という、新入社員が段階を経て成長していくことも示された。「内定は採用の一環ではなく、社員育成・教育の始まり」と御明さんはメッセージしているが、それはどういう意味か。

御明 「内定者フォロー」は、あくまでも、採用活動の一環としている企業が多いように思います。「採用は採用」「育成は育成」と、人事部の施策がぶつ切りになっているのです。そうではなく、採用活動も人材育成の一環であり、「内定者フォロー」は人材育成のため、と考えるべきでしょう。

 私が、企業の人事担当の方に、「新卒は、どのような人材を望みますか?」と尋ねると、企業の規模に限らず、皆さんが開口一番に「優秀な人材!」と答えます。「では、優秀な人材とはどういう人材ですか?」と問い重ねると、明確に説明できる方はほとんどいません。私が思う「優秀な人材」とは、「30代・40代で活躍する人」です。入社して、「見習い」から「一人前」になるまでには、少なくとも3年はかかるでしょう。「10年後・20年後に活躍する人」という長いスパンを視野にして、自社に合う人を採用することが重要だと私は考えます。