「内定者フォロー」に手間をかけることの意味
御明さんが、セミナーの冒頭で語ったように、昨今は内定獲得時期が前倒しになり、複数の内定を持ったまま就職活動を続ける学生が多いため、就職活動が長期化している。それは、「人事部の姿勢や人事担当者の考え方に大きな影響を与えている」と、御明さんは解説する。
御明 以前は、採用期間→内定者フォロー→入社……と、きっちり分かれていたのですが、昨今の傾向は、そうではなくなりました。人事担当者は通年で忙しくなり、内定者一人にかける手間や時間も減らさざるを得ない状況になっています。また、採用期間において、インターンシップの比重が大きくなっていることも、人事担当者の時間の余裕のなさに拍車をかけているようです。
御明さんの耳には、「『内定者フォロー』は面倒くさい!」という人事担当者の本音も届くという。メールの返信やSNSのレスポンスをなかなかしない内定者もいて、「連絡をとるのも一苦労」と嘆く人もいるそうだ。御明さんは、そんな人事担当者を鼓舞するように、「面倒くさいと思ったら、人材は育ちません」と言う。
御明 コミュニケーションはたしかに手間がかかりますが、「手間をかけないと、人は動かない」と、人事担当の方にはわかっていただきたいです。「内定者フォロー」に手間をかけることは、入社後の早期離職防止につながりますから、できる限りの手間はかけるべきだと私は思います。
「面倒くさい!」――これは、業務に追われたうえでの本音だと理解しますが、自分の子どもが生まれたときに、子育てを面倒くさいと思いますか? 「育成」「成長」といった言葉を発するだけではなく、「なぜ、新人が育たないと困るのか?」を改めて考え、内定者に向き合ってほしい。良い人材が増えれば、会社の利益が生まれ、社員の給料が上がっていく――こうしたシンプルなことを、私は念頭に置いています。