新卒社員に必要なスキルは「かわいがられること」
御明さんは、セミナーのなかで、社会人1年目の社員に必要なスキルとして「かわいがられること」という印象的なワードをあげた。「かわいがられることは、『内定者フォロー』にも関係している」とも明言したが、双方にはどのようなつながりがあるのだろう?
御明 かつて、『マナー&コミュニケーション』という、入社1年目の社員に向けたテキストをつくったときに、“入社1年目の社員に、いちばん必要なスキル”を探究したのですが、最終的に、「かわいがられること」という結論に至りました。マナーとコミュニケーションがしっかりできていれば、上司や先輩社員からかわいがってもらえます。そうすると、社内だけではなく、社外からもかまってもらえ、他者との関わりが密になって、仕事の経験値が自ずと増えていきます。その結果、「一人前」への成長が加速していくのです。
かわいがられるためには、まず、組織に馴染むこと。ここが、「内定者フォロー」と関わってくる部分で、内定期間中に、組織に馴染む準備を行うことがポイントです。準備のひとつめは、内定者が働くことの意味をじっくり考え、働く覚悟を持つこと。2つめは、働くことの不安や疑問を取り払い、働くことへの期待を持つこと。3つめは、企業と内定者が適切なコミュニケーションをとって、意識のギャップを埋めること。これらの準備を、企業と内定者が行い、4月1日(入社日)に心地よくスタートできる状態にもっていけば、組織に早く馴染むことができます。
内定者である学生と企業の意識のギャップを埋めるために適切なコミュニケーションを取っていく――御明さんは、セミナーでも、それを強調していた。そして、今回のインタビューで、「適切なコミュニケーションをとることは難しいですが……」と前置きして、次のように語ってくれた。
御明 人事担当者が内定者一人ひとりにしっかり向き合い、入社後に成長するためのフォローを行うことが大切です。気をつけたいのは、コミュニケーションが不足した「かたちだけの内定者フォロー」は、入社後の早期離職につながる恐れがあること。「内定辞退」よりも早期離職のほうが、企業にとっても本人にとってもダメージが大きい。そのために、内定期間中にお互いの価値観を擦り合わせ、意識のギャップを減らしていかなければいけません。
どんな「内定者フォロー」を行っても、「内定辞退」を完全に防ぐことができないのはたしかですが、「内定者フォロー」によって、志望度を上げることはできます。「この会社だったら、頑張れそうだ」と内定者が再確認できるような、企業との適切なコミュニケーションで、内定者の入社意欲が高まり、それが結果的に「内定辞退」を減らすのです。
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