コミュニケーションを活性化するための仕掛けは?
コロナ禍でリモートワークやハイブリッドワークが浸透したからこそ、必要性が高まってきた“あえて出社したくなるオフィスの存在”――内田洋行は、「出社したくなるオフィスとは、そもそもどのようなものか?」「出社した従業員同士のコミュニケーション向上によるシナジーの創出」「出社している従業員と出社していない従業員間のコミュニケーション」を、各企業の課題ととらえている。
村田 せっかく出社したのであれば、コミュニケーションをしっかり取りたいし、その場所でしかできないことを行いたいと誰もが考えます。ですから、「従業員のコミュニケーションを促進するためには、企業側はどうするべきか?」が私たちの考えのベースになっています。たとえば、内田洋行は、ICTで勤務状態を見える化するテクノロジーを持っていて、そこから得られるデータを活用しながら、各企業に応じた最適な環境づくりを提案しています。「出社している従業員と出社していない従業員間のコミュニケーション」という課題解決の糸口もICTがもたらします。
日進月歩で進化するICTとともに、内田洋行では、人とデータを活用して「人が主人公となるハイブリッド・ワークプレイス」の実現を目指している(*2)。個人とチームの創造性を高める場を「Team Base(チームベース)」と名付け、企業に提案している。
*2 「ハイブリッド・ワークプレイスは、リアルとデジタルの両方で働く場をより自然に繋ぎ、高品質なオフィスワークと人と人の結束力を高め、創造的生産性を高める場所です。フレキシブルで、サステナブルな優しさに包まれた快適な環境は、意見を交わしあうチームが自然と集まり、コミュニケーションが拡がります」(内田洋行の2023/11/13プレスリリースより)
髙橋 「Team Base」は、チームメンバーが社内で一堂に集う機会を設け、関係性の構築に取り組む空間です。働く環境がさまざまに変化する中で、お互いの情報の共有や課題への対応が即座に行われ、行動から学びが得られる。チームの一体感を醸成する場を目指しました。各メンバーが「Team Base」で集まっているときに別のオンライン会議に出席するための個室型ブースもスペース内に設置しているのも特徴です。余談ですが、オフィス内に設置する個室型ブースは、コロナ禍に世界中で売れました。この4年間で最もオフィス需要が高まった商品かもしれません。
「Team Base」が好評をいただいているのは、リモートワークで一人ひとりの働く場所が分散しているいま、「会社に来て、みんなでコミュニケーションを取ろう」というメッセージを持つ企業が多くなっていることの表れだと思います。昨今は、各企業の執務空間が狭くなり、コミュニケーションのためのスペースが広くなっている傾向もあります。
執務空間のレイアウトも、昭和を象徴する“島型対向配列”ではなく、自席を固定せず、いつでも好きな場所を選べるフリーアドレスを導入する企業が増えている。フリーアドレスは、従業員一人ひとりの働きやすさとともに、異なる部署の従業員間のコミュニケ−ションを期待できそうだ。
髙橋 ……ただ、フリーアドレスには、上司が部下を管理しにくい側面があります。私たち内田洋行のオフィスでは、2011年に業界に先駆けてITシステムをクラウド化し、「いつでもどこでも働くことができる」環境を構築した上でフリーアドレスを導入しました。
フリーアドレスでは、島型対向配列に比べて別のフロアにいる部下とコミュニケーションが取りづらいという側面がありました。
そこで、管理職自身が部下の席によく出向くようになり、結果として、部下とのコミュニケーションがより深まるようになりました。