「働き方『変革』」をサポートしていく内田洋行

 フリーアドレスでもリモートワークでも、ICTの活用が仕事を円滑にしていくことがわかった。

 オフィスエンタープライズ事業部の髙橋さんとエンタープライズエンジニアリング事業部の村田さんは、それぞれの職場でたくさんの部下をマネジメントしているが、リモートワークと出社におけるコミュニケーションの違いをどうとらえているのだろう。

村田 私たちの部署で言えば、新入社員などの若手は、オフィスへの出社を好む傾向があります。20代は仕事をどんどん覚えていかなければならないので、わからないことがあったときに、先輩社員にすぐに聞ける状況がありがたいのでしょう。リモートワークだと、雑談ついでに教えてもらうことがなかなかできませんから。また、関わるプロジェクトが大型化・複雑化しているため、誰か一人に仕事を任せるのではなく、チーム全体で動くことが増えています。先輩が後輩を指導しながら進めるケースもあり、チームのメンバーにとっては出社する方が安心だったりもします。私の個人的見解では、人が育つのに向いているのは、出社勤務です。ただ、週に1回くらいはリモートワークで集中的に仕事をすることにも価値があって、要は、臨機応変に選択できることが重要なのだと思います。

髙橋  コロナ禍前に社内でコミュニケーションをさんざん取ってきたベテラン社員にとっては、いまの時代は、リモートワークでも出社でもどちらでもよいと、私は思います。ただ、入社して間もない人に限れば、「リモートワークだと、成長曲線が鈍る」といった声も聞きます。他者とのコミュニケーションや日常仕事の中で学ぶ機会が減ることがその原因でしょう。オンラインは、「情報は伝わるけど、感情は伝わりづらい」という傾向がありますから、対話における気づきがどうしても少なくなってしまいます。自分の目で見て、肌で感じる体験をせずに学ぶというのは、扉にある穴から外の景色を覗いているようなもの。もちろん、リモートワークにもよさはありますが、扉を開けることで、若手社員は大きな世界を見たり感じたりすることができるのです。

 内田洋行は、オフィスの内装設計や什器類の提供にとどまらず、コンサルタントとしての役割を多くの企業から期待されている。その理由は、内田洋行が1989年に「知的生産性研究所」を設立し、2010年に至るまでの約20年間、働き方の研究を続けてきたことにある。そして、蓄積された調査研究をもとに、2010年に、あらゆる企業の「働き方変革」を後押しするコンサルティング部隊をつくった。政府が「働き方改革」を明確に打ち出したのが2014年――内田洋行は、それ以前に、しかも、 「働き方『改革』」よりも強いワードである、「働き方『変革』」を提唱してきた。

髙橋 おかげさまで、2010年から現在に至るまで、多種多様、さまざまな企業のコンサルティング事例を得ていますが、初期の代表的なクライアントがトヨタ自動車株式会社様でした。トヨタ自動車株式会社様の製造業における課題のお手伝いをさせていただいたことで、私たちも鍛えられ、多くの知見を蓄積することができました。

 企業の皆様をサポートさせていただく過程では、「どのような働き方を目指すのか?」という模索から、 “哲学的な問題”が生じることもあります。そうした難解な問題を解きほぐしながら、各企業に見合った方向性を私たち内田洋行が提示できるのは、35年間かけて蓄積してきた知見があるからにほかなりません。

→後編(10月10日公開予定)に続く