能登半島豪雨で浮上した「地域リスク」とは?能登半島豪雨で浮上した「地域特有」のリスクとは? Photo:JIJI

2024年1月1日、能登半島北部の輪島市や珠洲市を中心に能登半島地震が発生して多くの被害が出た。住宅だけでなく、道路や給排水施設などのインフラ、港湾、堤防にも被害は拡大した。そして9月21日、同じ地域で記録的な豪雨が発生。大きな水害に発展した。地形・地質の専門家である、だいち災害リスク研究所所長・横山芳春氏のレポートから、今回浮上した「地域特有」のリスクと命を守るために必要な準備について紹介する。(ダイヤモンド・ライフ編集部)

地震と水害で甚大な被害に
山と川に囲まれた地域事情

 9月21日、日本海から東北地方、太平洋にかけて秋雨前線が停滞していたため、石川県西方沖では暖かく湿った雨雲が発生しやすくなっていた。雨雲が線状に並び、同じ場所に雨を降らせ続ける「線状降水帯」が発生し、能登半島北部で激しい豪雨が続いた。

 その結果、地震で被災していた輪島市や珠洲市などで著しい水害が発生し、家が押し流されたり、山が崩落したりした。

 なぜ、ここまで甚大な被害になったのか。まず、能登半島の地形について考慮する必要がある。

 能登半島は山が多く、道路事情も厳しい地形条件だ。奥能登地域の中核都市である輪島市は、東側の河原田川と西側の鳳至(ふげし)川が合流する逆Y字状の低地に市の中心部が広がっている。

 山地に囲まれ、川沿いの低地に広がる氾濫平野に河井町、鳳至町などの市街地が形成されているため、もともと洪水の影響を受けやすい環境にあるのだ。

 そのため、地震で倒壊した住宅から仮設住宅に移った後、豪雨によって再び浸水被害に遭った住民もいた。今年7月末の報道では、「石川県内の仮設住宅の6割近くが洪水や土砂災害のリスクがある場所に建設されている」と指摘されていた。

 能登半島北部の市街地や住宅地は、もともと川沿いに発達してきたため、災害リスクが少ない地域だけでは仮設住宅の数が足りず、選定された用地の中にはリスクが高い場所もあった。災害が起こらなければよかったが、記録的な豪雨により今回の被害に至ってしまった。

 ハザードマップでこの周辺を見てみると、地形と災害リスクはどうなっているのだろうか。改めて実際に確認してみよう。