山の地盤と川の護岸
二カ所の損傷で高リスクに

 そもそも能登半島地震による被害は、ビルの倒壊や火災、津波、住宅の倒壊だけではない。洪水や土砂災害のリスクを増加させることも大きな問題だった。その理由は二つある。

 一つ目の理由は、山側の地盤が大きな影響を受けていたからだ。

 地震によって、急斜面の崩壊や地割れといった土砂災害が各地で発生していた。例えば輪島市塚田町では、斜面が崩れて埋設された配管が露出し、排水能力の低下が懸念されていた。輪島市の東側にある高台の住宅街や道路、グラウンドなどでも地割れや崩落が見られた。

地震後の輪島市の高台側(河井町・輪島中学校の東側)における地盤の状態地震後の輪島市の高台側(河井町・輪島中学校の東側)における地盤の状態(24年5月時点、提供/さくら事務所)

 これらの被害が21日の豪雨でさらに悪化し、山側の地盤の保水力が低下して土砂混じりの水が流出したと考えられる。特に、地割れが発生した輪島中学校のグラウンド周辺では、こうした影響が顕著だった。

 二つ目の理由は、川の護岸や堤防にも被害が及んでいたからだ。

 能登半島地震の揺れによって、各地で護岸や堤防が損傷し、一部では修復が終わっておらず、通常より低い水位でも氾濫のリスクが高まっていた。さらに、輪島市街地では河原田川の下流部が地震で隆起し、消防用水の確保が難しくなったことも報告されていた。こうした地盤変動が、豪雨災害に拍車をかけてしまったと考えられる。