ハザードマップは
安全を完全保証はしない
輪島市街地の被害については、SNSやニュースサイトを通じて多くの情報が集まっている。これらの情報を、下のように洪水・土砂災害ハザードマップに反映してみた。
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冠水・浸水は、輪島市役所周辺や鳳至町などの住宅街で確認され、仮設住宅やドラッグストア付近でも発生した。特に、洪水ハザードマップで3.0~5.0メートルの浸水が想定されていた地域で大きな被害が目立った。
また輪島市街地の東側では、山側から土砂混じりの水の流入が確認され、輪島中学校や航空自衛隊の分屯基地がある高台からも濁った水が大量に流れ込んだ。
実は、洪水ハザードマップでは浸水の想定外の地域でも被害が発生している。これは河川の氾濫ではなく、山からの水が保水されずに土砂とともに流れ込んだもので、地震による地盤の崩壊が原因の一つと考えられる。
この事例から、ハザードマップはリスクを把握する上で重要なツールだが、完全に安全を保証するものではないことが明らかだ。
内閣府が示す「避難行動判定フロー」では、ハザードマップで色がついている地域は原則避難が必要だ。しかし、色がない場合でも周りと比べて低地や崖のそばに住んでいる人は、避難情報に従って行動することが推奨されている。
つまり、ハザードマップで色のついていない場所が安全とは限らず、自己判断が求められるというわけだ。
豪雨災害のリスクは能登半島だけでなく、東京や大阪などの大都市でも共通の課題だ。特に沿岸や川沿いの平野部で発展した地域は、水害や地震による二次災害のリスクが高い。南海トラフ地震や首都直下地震の発生後に豪雨が重なれば、被害がさらに大きくなる可能性はある。
防災の基本は「まず命を守ること」。即死で命を失わないために、地震対策として建物の耐震性を確保したり、土砂災害や津波が予想される場合は速やかに避難したりすることが重要だ。家屋が倒壊してしまうと避難も困難になるが、安全な立地にあり、かつ耐震性が確保された家屋であれば、火災がない限り避難所に行く必要はない。
さらに、室内での負傷を防ぐため、普段過ごす場所や寝室には倒れやすい家具を置かないといった工夫が必要だ。震災時は医療が逼迫(ひっぱく)するため、普段ならすぐに治療が受けられる負傷でも、治療が遅れて命の危険に至る場合がある。
家の耐震性は診断や補強が可能だが、住まいの立地は変えられない。何より水害や土砂災害のリスクが少ない場所を選んで住むことが、災害による被害を最小限に抑えるために最も重要なポイントとなる。
※詳細な調査レポートについては、さくら事務所のホームページ(https://www.sakurajimusyo.com/guide/36433/)を参照