40年ぶりに復活した酒蔵が挑む、武蔵日本酒テロワール

新日本酒紀行「國府鶴」東京農工大学の育種米さくら福姫の酒造りで基本協定を締結 Photo by Noguchisyuzouten

 一度はやめた酒造りを、約40年ぶりに復活させた東京都府中市の野口酒造店。「奇跡的な出会いと、さまざまな人の協力のおかげ」と7代目の野口英一郎さんは感無量だ。

 野口酒造店は、武蔵国(今の東京と埼玉、神奈川の一部)の総社、大國魂神社のお神酒を造るために1860年に創業。だが先代は酒造りを諦め、お神酒は他蔵で醸造した酒に。野口さんは納得がいかず、「酒造りは、苦労ばかり多くもうからない」と父親から言われつつも、自醸酒復活への道筋を模索した。東京五輪・パラリンピックに合わせた復活は、コロナ禍で断念。

 転機は東京農工大学の大川泰一郎教授との出会いだ。同大開発米のさくら福姫の醸造依頼があり、受託後、大学を通じて、北海道の上川大雪酒造を担当した設計士と、杜氏の木下大輔さんとの縁を得た。米は大学の圃場と、旧武蔵国内に当たる埼玉の農家が栽培を担う。