そのため多くの場合は、労災保険給付※として従業員に支払われることになりますが、慰謝料は対象としておらず、休業損害や逸失利益などの全額を補償するものではありません。

 つまり、労災保険給付がなされている場合であっても、使用者は労働者から慰謝料、休業損害や逸失利益で補償されなかった金額について、損害賠償請求を受ける可能性があることになります。

 ちなみに、労働基準法上で「使用者」は、

「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」(第10条)

 と定められています。

 ちょっとわかりにくい表現ですが、つまりは法人(会社)だけでなく、社長や取締役などの経営者や部長、人事担当者など、労働条件を決定したり労務管理の実施などの権限を持つ人たち、ということです。

 つまり、役職が部長でも、権限を持たない人は使用者には含まれません。

【用語解説】※労災保険給付(いわゆる労災):労働者が業務や通勤が原因でケガや病気を負った(または死亡した)ときに、治療費など必要な保険給付を行う制度。請求書類に必要事項を記載して労基署に提出。調査の上認定されると保険給付が受けられる。