晴海フラッグから「船で通勤」?所要時間30分→5分も、なかなか浸透しないワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

タワマンが立ち並ぶ東京都心のベイエリアで、「船通勤」を流行らせようと東京都が補助金を出している。例えば、晴海~日の出間の陸地移動は30分かかるが、船ならわずか5分だ。通勤通学のメリットはありそうなものの、現状の2航路が賑わっている様子はない。便利で渋滞知らずにもかかわらず、なぜ通勤船の利用は伸び悩んでいるのか。(ライター 宮武和多哉)

東京五輪跡地「晴海フラッグ」から
わずか5分で通勤できる船とは?

 東京都心のマンション街「晴海フラッグ」から船で移動できる「ブルーフェリー(BLUE FERRY)」(中央区・晴海フラッグ~港区・日の出桟橋間)が、今春5月に開業した。

 晴海フラッグは、東京オリンピックの選手村跡地を住宅地に転用し、総戸数約5000戸、計画人口1.2万人の新しい街として1月に入居を開始したばかりだ。ただ、最寄り駅である都営大江戸線・勝どき駅までは徒歩20分程度もかかる。海を挟んで目の前にある品川ベイエリアへの航路開設に向けて、晴海フラッグは建設当初から、立派な船着き場を並行して整備していた。

 晴海~日の出間の陸地移動は、JR新橋駅を経由して「東京BRT」(バス)やゆりかもめを乗り継ぎ30分はかかる。一方で船なら、所要時間はたったの5分! 海上をショートカットするため渋滞の心配もなく、海風をいっぱいに浴びながら移動できるので、夏場の快適さは鉄道やバスと比べものにならないだろう。

 東京都は、通勤船の実証実験「TRY!舟旅通勤」について他にも何度か実証実験を行っている。22年10~11月の実証実験では、6航路を14日間で2848人が利用した。その後、23年10月に日本橋~豊洲航路を開設し、現在は2航路(晴海~日の出、日本橋~豊洲)を民間に委託して運航している。

 しかし、現在の2航路が乗客で賑わっている様子はなく、先述の22年の実証実験でも、乗船率で見るとたった23%に過ぎない。都内での通勤船は、鉄道やバスに次ぐ移動手段としてのポジションになり得ていないのが現状だ。

 便利で渋滞知らずにもかかわらず、なぜ通勤船の利用は伸び悩んでいるのか。