「片道500円は高い!」「冬は寒い!」
大阪では大失敗の過去も

 まず、現在の通勤船スケジュールは2航路ともに1日4~5往復、隔日運航であり、特に日本橋~豊洲航路は運航が夕方のみなど、現状では通勤利用に使うほうが難しい。

 そして根本的な問題は、運賃が高額なこと。両航路とも片道500円と、バスや鉄道の初乗り運賃の倍以上する。一般的に小型船は、バスに比べて数倍の軽油を必要とするため、これでも東京都から最大1日10万円(総費用の2分の1以内)の補助を受けており、値下げできる余地がほとんどない。

 また、船着き場の位置関係や機能性の低さも問題だ。特に、開業したばかりのブルーフェリーは、日の出船着き場がもともと倉庫街であり、近隣オフィス街である浜松町や田町には、ゆりかもめやバスで移動しないとたどり着けない。

 そもそも、船は運河や海がない場所には入れず、となると大半の船着き場は主要駅やオフィス街、マンション街からは離れた場所にある。いくら船着き場同士を短絡で移動できても、自宅から船着き場、さらに職場までの移動に時間がかかっては、結局は陸路移動の方が早いケースの方が多いのだ。

 また、夏場はいいものの、これから冬場にかけては「寒い!」に尽きるだろう。船に乗るには水辺まで歩く必要があり、特に晴海フラッグや豊洲では、海風が吹きすさぶ中で船を待たなければならない。

 乗船してからも、40人少々の定員は屋外の席も含まれており、室内が満員で屋外にしか座れなかったら...と考えると、利用に二の足を踏んでしまう。豊洲~日本橋間の航路の船員さんに聞くところによると、「どうしても冬は客が激減してしまう」そうで、解決は困難な問題といえるだろう。

 なお、かつては大阪市でも通勤船が導入されたことがある。しかし、開業から10年たっても1便平均4人(船の定員は108人)という失敗に終わり、大阪市の要請に全額出資で応えた京阪電鉄グループの業績にも響いた。その後は遊覧船へ転換し、現在は観光用途の「大阪水上バス」として認知されたが、やはり、都心部での船通勤は基本的には難しいのかもしれない。

 これだけの難点や過去の失敗例があるにもかかわらず、なぜ東京都は通勤船を推すのだろうか?