腕を組むビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

支店長の人事異動発表で
ざわつき始める支店

 私が支店長になったら…。ごくたまに、そんなことを考える。

 世の中には良い人と悪い人がいるように、銀行にも良い支店長、悪い支店長がいる。これまで私は、四半世紀あまりの銀行員生活において20人近くの支店長に仕えてきた。良い人、悪い人と二分すれば10人は良い人のはずなのに、机上の計算通りにはいかない。これが銀行の人事というものだ。

 支店長の人事異動が発表になると、支店はざわつき始める。情報解析班さながらにあらゆる自分のコネクションを辿り、さまざまな情報をかき集める。

「新しい支店長はかなり激しい性格らしいぜ」

「若い頃、法人セールスで業績優秀賞を5年連続受賞したらしい」

「奥さんは本店の元受付嬢らしい」

「日本酒通らしい」

「猫を飼っているらしい」

 いらない情報ばかりが錯綜し、一番知りたい本人の人間像が、いよいよ分からなくなってくる。憶測ばかりが先行する。

「気に入らない報告があるとゴミ箱を蹴飛ばす」

「病的に記憶力が良く『あの時、お前こう言ったよな?』と部下へ執拗に詰め寄る」

「営業のみに注力。事務部門など全く興味ない」

「とにかく感じ悪い」

 結局のところ悪い情報が大半を占め、支店全体が鬱々としたムードに包まれる。