北海道新幹線が現代に
よみがえらせた貨物新幹線構想

 しかし、貨物新幹線構想は消えなかった。東海道新幹線では所要時間の優位性が小さかったが、山陽新幹線開業で走行距離は最大1000キロ超になる。在来線貨物列車が16時間以上を要するところ、10時間程度で結ぶことができるため、山陽新幹線も貨物列車の運行に対応した設計とした。東北、上越新幹線の構造物も貨物列車に対応した規格になっているが結局、実現はしなかった。

 そんな中、北海道新幹線が貨物新幹線構想を現代によみがえらせた。新幹線と在来線貨物列車が青函トンネルと前後区間で線路を共用することになるが、ダイヤ編成上の制約に加え、すれ違い時の風圧など安全上の問題で新幹線の速度を時速140キロに制限せざるを得なかった(現在はトンネル内のみ速度向上)。

 これでは新幹線の整備効果が低下することから、JR北海道は在来線貨物を廃止すべく、新幹線車両の内部に在来線の貨車を搭載する「トレイン・オン・トレイン」を2000年代半ばに開発し、一定の成果を収めた。しかし、貨車の積み込み施設の整備がネックとなり、実現しないまま北海道新幹線の開業を迎えた。

 共用区間問題は新函館北斗~札幌間の着工で再燃する。東京~札幌間4時間切りを実現するためには、この問題の解決が不可欠となった。一時は在来線貨物を廃止し、船舶輸送に切り替えるという案まで登場したが、影響範囲が大きすぎて現実的ではない。