同じ現象は、他の言語を司る部位でも証明されています。ところが、これがうまくできない場合もあり、極端な場合には、第1言語は右脳で、第2言語は左脳で、というように処理する部位がとても大きく離れてしまうのです。

 そうなると、例えば英語で考えたことをスムーズに日本語に言い換える、ということがそれほど簡単ではなくなります。すると、母語で習得する学習の場面でスムーズに内容を理解することができなくなるかもしれません。

 このようなリスクを考えると、母国で生まれ育つ子どもに、あえて第2言語を早期から習得させようとすることは個人的にはお勧めできないのです。

 中にはバイリンガル教育が功を奏し、ネイティブ並みに話せるようになる子どももいます。しかし、私は多くの患者さんを通して、上手くいかなかった事例を数えきれないほど見てきて、その深刻さを痛感しています。そうしたリスクを冒してまで、バイリンガルを育てることに躍起になる必要があるとは到底思えません。

 どうしても英語を習わせたいのであれば、「何が何でもバイリンガルに」と英語を詰め込むのではなく、「私も英語が好きだし、子どもと一緒に楽しく学ぼう」と成果を期待せずに楽しむ程度に留めておきましょう。