非正規雇用の代名詞はパート主婦だった
今は労働者の4割が非正規雇用

 公的な医療保険を大きく分けると、(1)賃金労働者のための「被用者保険」(2)自営業者や無職者などのための「国民健康保険」(3)75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」の三つがある。今回の改正は(1)の被用者保険に関するものだ。

 企業や団体に雇用されている賃金労働者(被用者)は、勤務先の健康保険や共済組合などに加入することになっている。だが、賃金労働者のすべてが、被用者保険に加入するわけではない。

 正規雇用の場合は、就職すると同時に勤務先の被用者保険に加入する。だが、パートタイマーやアルバイトなどの非正規雇用は、原則的に労働時間などの条件を満たした場合に被用者保険に加入することになっている。

 一連の制度改正が行われる前までは、短時間労働者で強制加入の対象になるのは、1週間の労働時間と1カ月の勤務日数が、正規雇用の人の4分の3以上で、フルタイムに近い働き方をする人とされていた。

 この要件に満たない場合は健康保険に加入できないものの、労働者のほとんどが正規雇用だった時代は、短時間労働者の待遇が大きな問題にはならなかった。

 非正規雇用の代名詞は「パート主婦」で、彼女たちの多くは会社員の夫に扶養され、保険料の負担なしで夫の勤務先の健康保険に加入できていたからだ。企業にとっても、パート主婦は社会保険料を負担せずに安く雇える労働力として重宝されてきた。

 だが、いまや労働者の約4割が非正規雇用だ。その中には、自らが主たる生計維持者となって、家族の生活を支えている人もいる。

 被用者保険の適用要件を満たさない彼らは、国民健康保険に加入しなければならないが、健康保険に比べると相対的に保険料は高く、給付の種類も少ない。特に、傷病手当金を給付している都道府県国保はないので、病気やケガで仕事を休んで給与がもらえなくなると一気に困窮してしまう。