【子どものいない人生】42歳からの不妊治療で2000万円出費した女性の葛藤「無駄とわかっていても払い続ける方が楽だった」写真はイメージです Photo:PIXTA

不妊治療は、いまや4.4組に1組が行うポピュラーな治療になっている。しかし、晩婚・晩産化により、心身の負担を感じながら仕事と治療の両立に苦労する女性も多い。連載『「子どものいない人生」私たちの選択』第3回では、地方公務員としてフルタイム勤務しながら10年間の不妊治療に取り組んだかおりさんに話を聞いた。(取材・文/フリーライター 柳本 操 ダイヤモンド・ライフ編集部)

「やっぱり子育てがしたい」
42歳で不妊治療を開始

 晩婚、晩産化が進み、不妊に悩むカップルが増えている。国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)によると、4.4組に1組のカップルが不妊の検査・治療を受けている。あなたの周りにも、不妊治療について明かさず取り組んでいる人がいるかもしれない。

 42歳の時に不妊治療を開始し、53歳で閉経するまでフルタイム勤務をしながら不妊治療を続けたのが、地方公務員のかおりさん(仮名)だ。

 かおりさんは、からっとした姉御肌の口調が印象的な女性。一般企業に勤める1歳上の夫とは、趣味のスキューバダイビングを通じて知り合い、33歳で結婚した。当時、子どもは「欲しくない」と思っていて、夫にもそう伝えた。

「母には大切に育ててもらったので、親を批判するつもりはないのですが、母が2回離婚をしていて、私と弟を連れて再婚したことで苦労した経験があって。子どもがいる幸せな家庭というものを想像できず、将来家庭をつくりたいという気持ちがなかったんですね。将来について深く考えず、趣味を楽しむことを優先していたというのもあります」(かおりさん)

 ダイビングの先輩たちも子どもを持っておらず、親から、子どもについて聞かれることもなかった。

 ところが2013年、42歳の時に転機がやってくる。不正出血で近所の婦人科を受診したところ、幸い病気は見つからなかったが、その病院がたまたま不妊治療を専門としていた。

 問診票で「今後子どもを望むか」という項目を目にした時「やっぱり欲しいかも」という思いが湧き上がった。きょうだいが子育てをはじめていて、子どものいる生活が身近にあったこともある。年齢的に厳しくなっていると説明を受け、すぐに決断した。