アイドル幽霊も休みたい
上方落語「皿屋敷」

 町内の若い衆たちが、皿屋敷へお菊の幽霊見物に出かけていく。出かける前に隠居からは「いいかい、お菊さんの皿を数える声を9枚まで聞くと死んでしまう。だから絶対に6、7枚ぐらいで逃げ出すんだぞ」と教えられる。

 若い衆たちは、隠居に言われたように、6枚まで聞いたところで皿屋敷から逃げ出す。しかし、お菊の思わぬ美女ぶりにときめき、翌日も懲りずに皿屋敷へ出かけていった。お菊さんはたちまち人気者になり、見物人はどんどん膨れ上がっていく。

 ある日、あまりにも見物人が増えすぎて渋滞が発生してしまい、若い衆たちは6枚目で逃げるにも逃げられず、なんと9枚まで数える声を聞いてしまった。

 が、しかし、その声を聞いた者は死なない。じっと聞いてみると、お菊は9枚以降も皿を数えつづけて、18枚まで数えると「これでおしまい」と言って井戸の中に戻ろうとした。

 不思議に思った見物人の一人が、お菊に尋ねる。

「皿の数は9枚と決まっているだろう。なぜ18枚も数えるんだい」

「明日は休むので二日分数えたのさ」