「疲れたら寝ることです」
先人たちの“休息”の極意

『ゲゲゲの鬼太郎』を描いた水木しげるさんは、「寝ないで描きつづけていた同世代の漫画家はみんな早死にだった」とも嘆いていました。水木さんはどんなに仕事が重なっていたとしても睡眠時間を削ることはなかったそうで、だからこそ老齢期に差しかかっても存分に仕事に傾注できたのでしょう。

 かくいう私は入門前、サラリーマンになりたての頃、初ボーナスで談志に配属先の福岡の名品、明太子を送ったものでした。その返信には、直筆で「疲れたら寝ることです」と墨痕鮮やかに記されていましたっけ。

 考えてみたらあれから30年以上経過していますが、あの頃から日本人は働きすぎだと言われつづけてきたのに、いまだに「時短」に関する本がヒットするなんて、どこかおかしいですよね。

 私もサラリーマン当時、会社で「時短委員会」なる会合に参加し、「時短の目標を達成するには?」と上司に聞かれ「こういう会議をまずやめたらどうですか?」と言い放ち、思いきり顰蹙を買ったものでした(笑)。

 休むことは悪ではありません。

 江戸時代の労働時間は日が昇っている間、つまりは数時間だけでした。その後文明開化の名のもとに、資本主義が浸透し、すべての価値観は生産性一色に塗り替わってしまい、結果として、日本は世界でも珍しい圧倒的睡眠不足の国になってしまったのです。