「野菜がないすき焼き」の発想が
秀逸すぎる理由

 さて、そのような危惧をお話ししたうえで、いきなりステーキの「ひとりすき焼き」のコンセプトについてお話しします。

 テレビのニュースで報道された情報をベースにお話ししますと一瀬健作社長が考えていることは、大きく6点です。

(1)客席はコの字型のカウンター形式
(2)カウンターの中心に調理スタッフがいて客の目の前ですき焼きを焼いてくれる
(3)それを炊き立てのご飯と一緒に食べる
(4)すき焼きは肉だけで野菜は提供しない
(5)牛肉は和牛を中心にブランド牛も提供
(6)客単価はいきなりステーキの2000円よりも高い2500~3000円を想定

 いくつかツッコミどころがありますが、最大のポイントは「野菜がないすき焼き」です。

 これは常識的な方から見るとおかしなメニューであり、肉好きから見ればたまらないメニューです。「そんなの見たことない」という意見がある一方で、「これが食べたかった」という肉好きの顧客はたくさんいるはずです。

 この方式にする利点は、このやり方が一番、牛肉をすき焼きでおいしく食べさせるやり方だからです。

 漫画『美味しんぼ』で、かつて海原雄山がすき焼きは牛肉を不味く食べさせる料理だと喝破したことがあります。牛肉の美味しい風味が失せてしまうからです。