野菜なしの「ひとりすき焼き」なら
究極の至福の時間を体験できる

 あくまで妄想ですが、自分で食べたい肉を選び、それをしゃぶしゃぶよりも厚めにスライスしてくれるとします。目の前に提供された霜降りの牛肉を、調理人が焼いて味付けしてくれる。それを溶き卵の中に入れてくれるので、わたしはその肉を頬張り、炊き立ての白米のご飯と一緒に味わう。まさに至福の時間がイメージできます。

 ちなみに私はこれと同じ食べさせ方をやってくれる老舗を一軒知っています。行くたびに同行したメンバーはみな、心から幸せな状態になって帰路につきます。

 ただ頻繁に行けない理由は、鍋なので3人以上はそろわないといけないのと、食事が終わるまでの時間が2時間はかかること、そしてあくまで店主の懇意でやってくれる裏メニューだということです。

 それをおそらくこの新店舗では20分もあれば体験できるのではないでしょうか。これはまさにいきなりステーキ開業のときと同じ「発見」だと私は思います。

 さて、それでなぜこの記事を開業前に書いたのかというと、私はこの先、いろいろな意見がこの優れたコンセプトを邪魔するのではないかと考えています。何しろ新事業のコンサルタント経験が長いので、開業までにペッパーフードサービスの社内で起きることがいろいろと想像できます。

 特にいきなりステーキで失敗した会社の新事業ということになると、野菜を加えないかぎり銀行からの融資が下りないかもしれません。

 野菜は欲しい人だけにサラダなどのサイドディッシュで提供すればいいのですが、インスタ映えを考えたらそれではダメだとか誰かが余計なことを言い出しそうです。

 仮にスタートがうまくいったとしても、ターゲットがいきなりステーキのときのような肉好きの日本人なのかそれとも訪日外国人のインバウンドなのか、高級牛肉を使うのか安い肉を用いるのか……。コンセプトはどんどんブレるかもしれません。

 それほどいきなりステーキの「ひとりすき焼き」のコンセプトは周囲が理解しづらい非常識なアイデアなのです。非常識なまま社長の決断で開業にこぎつけられるかどうか、個人的には期待が高まっています。