すき焼きの弱点は
「肉の風味が失せる」「焼き加減が難しい」こと

 そもそもすき焼きはおかしな食べ方の食べ物です。最初の牛肉1枚は焼いて食べるのですが、その後、野菜を入れることで野菜の水分が割り下と混ざり、2枚目以降は牛肉を煮ることになります。1枚目の牛肉は美味しいけれど、2枚目以降の牛肉は1枚目ほどは美味しくないのです。

 さらに言えば、本当に美味しいすき焼きの肉は霜降りをしゃぶしゃぶよりは厚めに切ったものです。ところが私たちが日常的に行くしゃぶしゃぶ食べ放題のお店では、すき焼きを注文しても肉は薄切りのものが出てきます。

 多くのお店でしゃぶしゃぶとすき焼きで肉のスライスが同じというのはひとつは店舗オペレーションコストを下げる効果がありますが、もうひとつは肉が薄いほうがすき焼きならぬ「すき煮」になった状態では美味しいからです。

 この従来のすき焼きの欠点を考えたら、ニュースで紹介されたペッパーフードの「ひとりすき焼き」のコンセプトは肉好きの目でみればとても理にかなっています。

 そして実は美味しいすき焼きについてはもうひとつ重要なポイントがあります。それは肉を焼くタイミングの見極めが難しいのです。自宅ですき焼きをやってみると、ちょっとタイミングが長いだけで霜降り肉が固くなってしまいます。

 よく老舗のすき焼き屋チェーンなどで、最初の1枚は仲居さんが焼いてくれて、その後で野菜をいれ割り下で味をととのえて「あとはご自由に」というお店があります。あれは1枚目の一番美味しいところをプロが焼くことで顧客満足を高めるオペレーションなのです。

 そのことを考慮すれば、これから開店するいきなりステーキのひとりすき焼きのサービスを想像すると、思わずのどが鳴ってきます。