「開けなさい!」という父の怒鳴り声と共に、襖を激しく叩く音がする。突っ掛けた木刀を押さえながら抵抗を試みるが、やがてガタガタッと襖が外されて内側に倒れかかってくる。

 絶望の音がした。

 ここで私の記憶は少し途切れる。

 気がつけば、部屋の外の狭い踊り場で、私は父に叱責されながら叩かれていた。

ジンジンと疼く頬
みみず腫れだらけの手足

 身を守るために体を丸めていたので、土下座のような格好に見えていたと思う。なぜかこのときの記憶は、上から自分の背中を俯瞰で見ているものになっている。ベルトやら何やらで鞭打たれながら、私はずっと無言で耐えていた。止めどなく流れる涙は、悔し涙だった。なぜ、苦しい思いをしている自分がさらに怒鳴られ、殴られなければならないのか。

 痛い。苦しい。悔しい、くやしい。

「学校に行くと言え!」と言われ続けていたように思うが、痛みに耐えるのに必死で意識も遠くなりかけていた。

 やがて、責め続けるのに疲れたのか、それとも飽きたのか、父は手を止めた。どれくらいの時間が経っていたのだろう。やっと解放された私は、西日の差しかかった部屋で、ビンタを受けジンジンと疼く顔のまま、みみず腫れだらけの手足を見つめていた。