このためチームや選手個人の「記録」は、試合のたびに統一した様式で記録され、集計されるようになったのだ。

 野球の記録法を考案し普及させたのは、ヘンリー・チャドウィック(1824~1908)というジャーナリストだ。

 イギリス生まれのヘンリー・チャドウィックは、イングランドのエクセターで、リベラルな思想を持つジャーナリストの父ジェームズと母テレサとの間に生まれた。1837年に父ジェームズが家族を連れてアメリカに移住したのに伴いアメリカにやってきて、1847年にスポーツジャーナリストになった。

 ヘンリーの異母兄にサー・エドウィン・チャドウィック(1800~1890)がいる。エドウィンはロンドンで生活貧困者の救済や、下水道の整備などを推進し「公衆衛生法」の成立に貢献、「公衆衛生学の父」と呼ばれ英王室からナイトの称号を賜っている。

 エドウィンは1842年『イギリスの労働人口の衛生状態に関する報告書』を著したが、その中で、居住地の環境によって引き起こされる平均余命の変動を初めて統計情報を用いて紹介し、歴史的な評価を得た。昨今の新型コロナ禍で、イギリスのメディアは改めてエドウィン・チャドウィックの功績を取り上げている。