野球はヘンリー・チャドウィックという人物がスコアを発明したことにより、競技者だけでなく多くのファンや記録マニアを惹きつける奥深い球技になった。ロマンあふれる公式記録の歴史をさかのぼってみよう。本稿は、広尾晃『データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
各プレーの記録が容易な野球は
“数字”と相性が良い球技
「野球は数字と相性が良い」
永年、野球の記録に親しんできた筆者が常々思ってきたことだ。
野球は「投手が打者と対戦する」という小さな「勝負」の積み重なりであり、「ボールが静止したところ」から始まる「セットプレー」の連続で成り立っている。
「勝負」は9イニングス制の試合では、1試合で両チーム合わせて最低でも50回以上行われる。1つの「勝負」に関与するのは投手、打者、走者、野手を合わせてせいぜい数人。その時間は長くて30秒程度だ。
だから記録者は、1つ1つの勝負を容易に記録することができる。筆者は小学生のころから父に教えられて野球のスコアをつけてきたが、今ではそれが自然なことになって、スコアをつけずに試合を観ると居心地が悪い。
サッカーやバスケットでは、こうはいかない。ボールが常にめまぐるしく動いているうえに、1つ1つの勝負には多くの選手が入り乱れて関与するからだ。
それでも記録者がいて、スコアブックは作成されているが、チームや選手を数字で評価する指標はゴール数やアシスト数など数少ない。膨大な指標が用いられる野球とは大きく違う。