記録マニアを惹きつける野球は
偉大なヲタクたちの研鑽の賜物

 チャドウィックは1871年にスタートした初めてのメジャーリーグであるナショナル・アソシエーション(NA)の運営に参加するとともに、こうしたルール改正にも関与。1880年代には、盟友でMLB初期の大投手、さらにはスポーツメーカーの創業者であるアルバート・スポルディング(1850~1915)が刊行した『Official Baseball Guide』の編纂に従事した。

 野球は、その原初の時期にヘンリー・チャドウィックという「記録の天才」を得たことで、競技者だけでなく多くのファンや記録マニアを惹きつける奥深いスポーツになった。強調しておきたいのは、野球記録の始祖とも言えるヘンリー・チャドウィックがプレイヤーではなかったことだ。にもかかわらず彼は野球を愛し、その記録を後世にとどめるために多大な貢献をした。

「野球の記録」はチャドウィック以降も、プレイヤーとしての経験には乏しいが野球に対して強い愛情を抱く日米の研究家によって研究がすすめられ、新しい発見がなされ、進化してきた。今風に言えば「ヲタク」の彼らは、プレイヤーたちに必ずしも快く迎えられたわけではないが、それでも野球界の発展に大きく寄与してきたのだ。