メトロ上場! 鉄道「最強株」の正体#6Photo by Yoshihisa Wada

運輸事業の収益性の高さが私鉄随一の東京地下鉄(東京メトロ)。しかし業績はコロナ禍前の水準まで回復しておらず、さらなる成長のための「第二の柱」の創出が必要不可欠だ。特集『メトロ上場! 鉄道「最強株」の正体』の#6では、社長の山村明義氏に上場後の成長戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

成長の鍵は「駅とまちの一体的整備」
今後は年間300億円を成長投資へ

――東京地下鉄(東京メトロ)が上場後に考える成長ストーリーを教えてください。

 東京は駅を中心に発展してきた街であり、当社は東京の交通ネットワークの中心部を担っています。この点を強みとして、駅とまちの一体的整備をしていくことが、今後東京メトロの目指す成長ストーリーのかたちだと考えています。

 例えば、虎ノ門ヒルズに新駅ができましたが、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーと直結しているので、駅をご利用される方にとって便利になりました。駅直結なので不動産の方も利用が高まります。それに広告事業もやっていますので、鉄道事業、不動産事業、広告事業が一体となったビジネスを展開できるわけです。

――不動産事業を鉄道事業に次ぐ「第二の柱」にするということでしょうか。

 鉄道事業だけが中心だと、コロナ禍のように運輸収入が激減したときに、経営がなかなか難しくなります。なので、鉄道以外の柱をつくっていくということで、当社も今後不動産事業を展開していくことが重要だと思っています。

 今後は小田急電鉄、東急不動産と新宿駅西口の共同再開発を行います。丸ノ内線の直上なので直結性が高く、新宿駅のエントランスの事業になりますので、まちづくりの効果は非常に大きいと思います。それから上野が案外、業務集積地になっています。東京メトロの本社ビルも含めて、かなりの土地を保有していますので、東上野の開発にも今後力を入れていきます。

 今まで鉄道中心の設備投資だったのですが、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてかなり先行投資をしてきました。鉄道についてはかなり充実してきたと思います。これから設備投資を大体年間1000億円ぐらいのレベルでコントロールしていこうと思いますが、そのうちの3分の1は、成長投資に使っていく。成長投資とはすなわち不動産の取得・開発などです。

 それから当社が保有している土地をREIT(不動産投資信託)に売却し、得た利益を不動産開発に使う循環型のビジネスモデルにも今年度から取りかかっています。

――24年3月期の不動産事業の売り上げが134億円だったことを考慮すると、年間300億円の不動産投資はかなり規模が大きいのではないでしょうか。

 期待してください。ただ少し土地の価格が高くなってきたのはありますけどね。設備投資の3分の1を成長投資として積み重ねていけば、かなり増えていくと考えています。

東京地下鉄(東京メトロ)の成長の鍵を握るのは「駅と街の一体開発」だと山村明義社長は強調し、年間300億円規模の成長投資を実施していくと話す。一体どこの駅が“メトロ不動産”の対象になるのか。次ページで明らかにする。