迷走 皇帝なきJR東海#2Photo:JIJI

JR東海のリニア中央新幹線プロジェクトの最大の障害となっているのが、静岡県から工事着工の同意を得られていないことだ。県とJR東海の関係はこじれにこじれている。だが、両者の関係悪化の要因は、論争の的となっている大井川の水減少問題だけではない。特集『迷走 皇帝なきJR東海』(全8回)の#2では、JR東海の「上から目線」と「国益至上主義」がどのように関係自治体の神経を逆なでしてきたかや、両者の関係修復のポイントに迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

JR東海の稚拙なコミュニケーションが
静岡県との“暗闘”長期化を招いた

「静岡県の川勝平太知事は独特のキャラクターで、JR東海が付き合いにくいのは分かる。だが、川勝氏がリニアの工事を認めないことによって知事選で支持を得てきたのも事実だ。JR東海は県に付け入る隙を与えてしまったことを反省する必要がある」。

 暗礁に乗り上げたリニア中央新幹線の建設について、ある政府関係者はため息交じりにこう語った。

 本特集の#1『JR東海リニア中央新幹線は年600億円の赤字!?「葛西案件」の泥沼収支を独自試算』で詳述したように、JR東海のリニア開発計画は採算が悪化しているとみられるが、工期の延長はさらなるコストの膨張を招き、同社を追い込んでいく。

 JR東海は静岡県から工事への同意を取り付けようと躍起になっているが、先行きは不透明だ。

 実は、静岡県とJR東海との対立を激化させたのは、同社の代表権を28年にわたり持ち続けた「皇帝」葛西敬之名誉会長(故人)だった。

 次ページで、静岡県とJR東海の暗闘の実態や、同県のみならず東京都や長野県などでもリニアが大きな反発を受けている原因を明らかにする。