メトロ上場! 鉄道「最強株」の正体#3Photo by Yuito Tanaka

2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行されて以来、東京に人流が戻ってきた。その結果、23年度の東京地下鉄(東京メトロ)の駅別乗降者数は、対前年比で観光地が増加した。しかし10年前と比べると、全く違う結果が浮かび上がる。特集『メトロ上場! 鉄道「最強株」の正体』の#3では、データから本当に再開発が成功した駅を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

観光客増の駅が多数ランクイン
前年比トップは虎ノ門ヒルズに

「労働人口の減少は鉄道会社にとって大きな問題だ。単に鉄道だけをやればいい時代ではなくなった」

 東京メトロの不動産・流通・広告事業の責任者である亀野拓也執行役員はそう話す。

 2023年度の定期券収入は、コロナ禍前の19年度比で81%。この落ち込みが定着し、さらに労働人口が減り続ければ、運輸事業の売り上げが維持できなくなる。

 定期券収入の減少をカバーするためには、インバウンドによる運輸収入が必要不可欠となる。実際、東京メトロの23年度の駅別乗降者数の前年比増加率ランキングを見ると、同社がインバウンド需要を無視できない理由が分かる。

 1位の虎ノ門ヒルズは、23年10月の虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの開業、3位の神谷町は同年11月の麻布台ヒルズの開業に伴い乗降者数が増加したとみられるが、前年比増加率のトップ10は浅草周辺を中心に観光客増がけん引した結果となった。

 2位の上野広小路と5位の末広町、4位の田原町と6位の浅草は銀座線の隣駅だ。末広町は秋葉原エリアの北側に位置し、浅草は言わずと知れた国内屈指の観光地である。これらの銀座線沿線は、観光地である渋谷エリアと浅草エリアをつなぐ移動手段として、インバウンドを中心に乗降者数を増やし、前年比120%以上の結果を出した。

 しかし乗降者数を10年前と比較すると、前年比とは全く異なる結果が浮かび上がる。再開発で住人が増えた街の駅で乗降者数が増加する一方で、逆に都心の人気エリアの駅で大きく減っていることが判明した。さらには前年比で増加率トップ10に入っているにもかかわらず、10年前比で減少率ワースト10に入ってしまった駅もあるなど、意外な結果が見えてきた。

 気になる東京メトロの「10年で人が増えた駅・減った駅」を次ページで大公開する。

図表:10年で乗降者数が増えた・減った駅ランキング(サンプル)