JR東日本 脱・鉄道への分岐点#4Photo:PIXTA、Vladimirovic/gettyimages

JR東日本が赤字ローカル線の存続問題を巡り、一部の路線で地元自治体との協議に入った。鉄道会社は成長を追う必要がある一方で、インフラ企業としての使命もある。本業の鉄道事業が長く抱えてきた重い問題をどう解決していくのか。特集『JR東日本 脱・鉄道への分岐点』(全5回)の#4では、JR東日本を悩ませる「採算性vs公共性」のジレンマに迫った。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)

「1日2000人未満」路線を昨年公表
今年に入り、久留里線などで協議入り

「何とか鉄道を残す方法はないのか」。利用者数の減少が深刻な千葉県内の久留里線の在り方を巡って、5月に開かれたJR東日本と地元自治体との協議会では、地元関係者からそんな声が上がった。

 久留里線の久留里~上総亀山の区間は、2021年度の1キロ当たり1日平均利用者数(輸送密度)が55人。JR東日本が公表している、100円を稼ぐためにどれだけの費用がかかったのかを示す「営業係数」は、1万9110円。いわば超赤字路線なのだ。

 JR東日本は22年7月、輸送密度が2000人未満にとどまる路線の収支を初めて公表。35路線66区間が対象となった。

 久留里線もその一つで、JR東日本が3月に協議を申し入れ、協議会が発足。地元関係者との間で議論が交わされている。

 久留里線だけではない。JR東日本は23年1月、大雨で被災し運休が続いている青森県の津軽線でも、地元自治体との間で存続を巡る議論を始めた。さらに、9月8日には、22年の豪雨で被災して運休が続く、山形県と新潟県を結ぶ米坂線でも最初の協議が持たれた。

 JR東日本が足元で赤字ローカル線の存続の議論を加速した背景には、新型コロナ禍がある。これまで、JR東日本は新幹線や首都圏のドル箱路線で稼ぎ、ローカル線の赤字を穴埋めしてきた。

 だが、その構造は揺らぐ。コロナ禍で、鉄道事業そのものが地盤沈下したことにより、赤字ローカル線を放置するわけにいかなくなったのだ。

 JR東日本の深澤祐二社長は昨年末のダイヤモンド編集部のインタビューに対し、23年に「協議会を発足させて話し合い、実証事業を行う」と断言した。そして、宣言通り今年に入って、久留里線など3路線で議論がスタートした。

 鉄道会社には上場企業として成長が求められる一方、インフラ企業としての使命もある。採算性と公共性のバランスをどう図っていくのか。次ページでは、JR東日本が、長年にわたり抱えてきた赤字ローカル線問題に対し、どのようなスタンスで臨んでいくのかを明らかにする。