しかし、これをピークとして、それ以降、日本円の実質実効為替レートは傾向的に下落した。

 2010年の円高期に一時的に回復したが、2013年の大規模金融緩和で急速に下落し、100程度の値になった。そして2021年以降、さらに下落した。

 現在の日本円の市場為替レートは1990年頃の水準にまで低下したが、この頃の実質実効為替レートは150程度であり、現在の約2倍あった。

 1990年以降、日本の物価上昇率は、アメリカの物価上昇率に比べて低かった。この状況下で購買力を維持するためには、円高になる必要がある。それにもかかわらず、市場為替レートが当時とほぼ同じであるために、現在の実質実効為替レートは、1990年頃より低くなっているのだ。

ビッグマックの比較では
1ドル=79円が適切なレート

 ところで、相対的購買力平価は、基準時点との相対的な比較であるため、任意の時点での「あるべき為替レートの水準」を示すことにはならない。それができるのは、基準時点が何らかの意味で「あるべき状態だった」と評価される場合だけだ。