いま、賃金上昇率が物価上昇率に等しいとすれば、日本人の賃金が伸びないのに、外国の商品の価格は上がっていく。このため、為替レートが不変では、それまで買えた外国のものを買えなくなる。以前と同じものを買えるためには、為替レートが円高にならなければならない。

 図表3-3で購買力平価と市場レートの比較をすると、つぎのとおりだ。

図表:IMFの購買力平価と市場レートの比較同書より転載
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 1980年代前半には、市場レートが購買力平価より円安だった。つまり、この時代には、円は過小評価されていた。これは、市場為替レートが実質実効為替レートより円安だったことに対応している。

 1980年代後半からは、市場レートが購買力平価より円高である時代が続いた。つまり、この時代には、円は過大評価されていた。これは、市場為替レートが実質実効為替レートより円高だったことに対応している。この傾向は、とくに1990年代後半や2010年頃に顕著だった。

 ところが、2013年からこの関係が逆転し、市場レートは、購買力平価より円安になった。これは、大規模金融緩和政策導入の影響だ。