しかし、日本では、男女の違いよりも先輩・後輩の序列のほうが重要で、性別はそれほど重要ではありません。かつてのエレベーターガールのように女性だけの職場においてもタテはありますし、男性と女性が混在していてもタテなのは変わらないのです(注5)。
中根は「タテ社会」の日本も東大も、アメリカ社会より「ずっとフェア」であり、「地位を築いてしまえば差別はない」とすら主張していた。自らのキャリアを振り返り、「周りの先生たち」のみならず「学生にも女性に対する偏見がないようにも思いました」とも述べている。
東大のタテ社会に入れば
男女は平等になれる
実際、東大を卒業した中根はそのまま東大という「タテ社会」のなかに入り、他の教員と「同等な取り扱い」を受けて教授まで昇進を続けることができた。タテ社会のメンバーになってしまえば男女は平等になれるのだと彼女は信じていたし、ことさらに女性としてのアイデンティティを押し出すことに意味を感じていなかった。
注5 中根千枝、現代新書編集部「女性初の東大教授が歩んできた道 インド山岳地帯から日本の農村まで 先輩後輩関係が重要なタテ社会の生き方」『現代ビジネス』2019年11月22日(https://
gendai.ismedia.jp/articles/-/68470)