目の前にあるマシュマロを
いま食べる?あとで食べる?

 非認知能力の核となる要素のひとつが自己コントロール力だが、最新の心理学研究でも、自己コントロール力が人生の成功を大きく左右することが強調されている。

 たとえば、心理学者モフィットは、1000人の子どもを対象に、生まれたときから32年間にわたって追跡調査を行うことで、子ども時代の自己コントロール力から将来の健康や富や犯罪を予測できることを発見した。

 つまり、我慢する力、衝動をコントロールする力、必要に応じて感情表現を抑制する力など、自己コントロール力が高いほど、大人になってから健康度が高く、収入が高く、犯罪を犯すことが少ないことがわかったのである。

 自己コントロール力といってもなかなか実感が湧きにくいという人もいるだろうから、わかりやすいようにマシュマロ・テストを紹介することにしたい。

 自己コントロール力に関する研究の原点とみなすことができるのが、心理学者ミッシェルたちの満足遅延課題を用いた研究である。

 その実験はマシュマロ・テストとも呼ばれるが、子どもにマシュマロを見せて、今すぐ食べるなら1個あげるが、研究者がいったん席を外して戻るまで待てたら2個あげると告げ、待てるか、待たずに食べるかを試すものである。これは、より大きな目標のために欲求充足を先延ばしできるかどうかをみるための実験といえる。