このように、幼児期に欲求充足を先延ばしできるかどうかが、10年後や20年後、さらには40年後の自己コントロール力の発達につながり、それによって学業・仕事や人間関係を含めて社会でうまくやっていけるかどうかを予測できることが示されたのである。

 その後も、多くの研究によって、子ども時代の自己コントロール力によって、その後の学業成績や人間関係の良好さ、問題行動や抑うつなどの病的傾向、失業などを予測できることが確認されている。

放任も過保護も遊び不足も
非認知能力の発達を阻害する?

 自己コントロール力の一種とみなすことのできる感情コントロール力に関しても、それが高い方が、葛藤場面で自分自身や他者の感情を考慮した解決策を思いつくことができると示されている。

 このように社会適応のために重要な役割を担う非認知能力だが、それを鍛えてもらえない子どもたちが増えている。放任家庭や過保護・甘やかし家庭だけでなく、「お受験」に象徴されるように幼児期から勉強を強い、十分な遊び体験をさせない偏った教育家庭も、非認知能力の発達を阻害しかねない。

 かつては学校で鍛えてもらうことを期待できたが、今ではそれは期待できない。そういう生育環境ゆえに、思い通りにならない逆境を乗り越える力がつかない子どもたちが増えている。自分にとって心地良い居場所をつくる際にも、このような生育環境は非常に不利であるといわざるを得ない。