個人的結論

 この実験の結果、ずっと「僧侶モード」でいたいとは思わないものの、僕は射精後の感じ方については意識的になった。射精後の僕は、二日酔い(ハングオーバー)ならぬ「射精ハングオーバー」に陥っていたことに気づいた。期間は2~3日間。このときは何をするにもエネルギーに乏しく、没頭できず、生活の満足度は低下した。射精を減らした時期には、先にも書いたが、セックスの回数は増え、人生のすべてが好ましく思えた。これはまったく予想していなかった結果だ。

 3段階にわたる実験全体を通して、個人的には、セックスの回数を増やし、ただし射精は30日に1回、というパターンのときに最大限の満足を得ることができた。

「科学的」には体に何が起きている?

 僕はこの実験結果に本当に驚いたが、そうなるのが当然だと説明する科学はふんだんにある。射精後、男性の体内ではプロラクチンが急増する。性衝動を失わせて、一眠りしたくなるようにさせるホルモンだ(*1)

 女性もオーガズム後にプロラクチンを生成するが、男性ほどのレベルではない。快感ホルモンと呼ばれるドーパミンと反対の作用を及ぼすので、僕たち男性が、ことを遂げたあと数時間はちょっと落ち込む理由がこれで説明できる。

 男性はプロラクチン値が上昇すると、テストステロン値が下降する。健康な男性のテストステロン値は3週間の禁欲で上昇することが研究でわかっているが、そうなる理由のひとつがここにある(*2)。射精なしでセックスすることもテストステロン値を高める。この場合は72%の上昇率だ(*3)

 実験中、僕は女性たちに興味を持たれているように感じたものだが、その理由はこのホルモンのメカニズムにあったのかもしれない。意識的に女性の気を惹くようなことはしなかったのだが、彼女たちは僕の高まったテストステロン値と強い性的欲求を感じたのかもしれない。あるいは僕のフェロモンが変化したせいなのかもしれない。

 射精しないことがパワーの源であり、女性をその気にさせる効果もあることを、学生時代に知っていたらどんなによかっただろう!

 大事なことなので注意しておくが、道教の教えでは、女性の性衝動はオーガズムに達しても減退することはない。だから、オーガズム断ちの実験は男性限定だ。これに挑戦した女性は、オキシトシン値が下がり、例外なく悪い経験だったと報告している(これに関する詳細は本書HACK14で)

(本原稿は、『シリコンバレー式超ライフハック』〈デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳〉からの抜粋です)

参考文献
1. Tillmann H. C. Krüger, Uwe Hartmann, and Manfred Schedlowski, “Prolactinergic and Dopaminergic Mechanisms Underlying Sexual Arousal and Orgasm in Humans,” World Journal of Urology 23, no. 2(July 2005): 130-38; https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00345-004-0496-7.
2. Michael S. Exton, Tillman H. C. Krüger, Norbert Bursch, et al., “Endocrine Response to Masturbation-Induced Orgasm in Healthy Men Following a 3-Week Sexual Abstinence,” World Journal of Urology 19, no. 5(November 2001): 377-82; https://link.springer.com/article/10.1007/s003450100222.
3. James M. Dabbs Jr. and Suzanne Mohammed, “Male and Female Salivary Testosterone Concentrations Before and After Sexual Activity,” Physiology & Behavior 52, no. 1(July 1992): 195-97; https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0031938492904539.