結果は想定どおりだった。毎晩その場で作品を選んだ第1のグループでは、被験者の大半が3日間とも娯楽映画を選択した。これに対し、第2のグループでは、娯楽映画が多く選択されたのは1日目のみで、2日目、3日目については、どんな作品を観るべきかを学生たちがじっくりと考えるため、教養映画が選ばれやすいという結果となったのだ。

 これはともすると、映画という分野についてだけいえる、取るに足りない実験と思うかもしれないが、決してそうではない。この実験は、われわれが未来のことをどう考えているかについて、実に多くのことを教えてくれる。

「現在バイアス」のせいで
やるべきことが先延ばしになる

 われわれが未来の「美徳」(教養映画、グリルチキン&サラダ、仕上げなければならないレポート)よりも、目先の「悪徳」(娯楽映画、ハンバーガー&ポテト、仕事中のネットサーフィン)を選びがちなのは、「悪徳のほうが多くの報酬をいま与えてくれるから」である。

 これは行動科学で「現在バイアス」と呼ばれるもので、明日の大きな利益よりも今日の報酬を優先し、重要な意思決定や行動を先延ばしすべきでないとわかっていながら先延ばししてしまう心理特性のことだ。