いつも教養映画を観ようと思っているのに、いざとなると娯楽映画のほうを選択してしまう――あなたも行動科学者のダニエル・リードやジョージ・ローウェンスタイン、共同研究者のショバナ・カリアナラマンと同じように、こんな経験があるのではないだろうか。
一般に教養映画は、ずっと観ようと思っていた、あるいは、もっと前に観ておくべきだった(そして、観終わったときに観たことを後悔しないであろう)作品であるのに対し、娯楽映画は「おもしろいがすぐに忘れ去られてしまう作品」だ。
研究グループがこの教養映画現象を議論しはじめた当初、彼らの仲間うちでは『シンドラーのリスト』[訳注:1993年公開のアメリカの歴史映画。第二次世界大戦中、多くのユダヤ人を虐殺から救った実在のドイツ人実業家を描いた作品]を観ようと思っていたのに、実際に観るまでに何週間もかかった人が多く、結局まったく観なかった人も多数いたと述べている。
未来の選択をいますることで
自分の意図に沿った行動ができる
優れた行動科学者の例に漏れず、リード、ローウェンスタイン、カリアナラマンも、この深い洞察に富んだ観察結果のみ示して終わり、とはしなかった。彼らは、人がさまざまな意思決定を迫られたとき、この現象がどのような結果を生むかを調べる実験を考えた。