日野自の業績悪化を引き起こしたエンジンの認証不正問題は22年に発覚したが、不正が始まったのは00年代初め頃からとされているなど根が深い。親会社のトヨタとしても、豊田章男会長が社長在任中に露見した不祥事であることから、日野自の処理については「会長マター」として進められている。実際、今年の6月には、豊田章男会長からの信任が厚い、トヨタのスポークスマンだった長田准・トヨタ前渉外広報本部長が日野自の取締役に送り込まれている。

 ちなみに、一方で、21年6月に日野自のトップに就任したトヨタ出身の小木曽社長は、22年3月にエンジン認証不正が発覚して以来、矢面に立って謝罪会見をこなしてきたが、今回の中間決算発表には顔を出さず、先日開催されたジャパンモビリティショーで予定されていたトークショーにも急きょ、欠席した。小木曽氏は、トヨタ時代、ハイブリッド車プリウス開発を担った最古参エンジニアであり、真面目な人柄を常ににじませてきたが、その動向が懸念されるところだ。

 また、日野自の行く末には、トヨタだけでなく日本の自動車産業の競争力強化を支援する経済産業省も関心を寄せている。

 統合協議の相手先の三菱ふそうは、もともと三菱自動車工業から分離した企業であり、ダイムラーと三菱グループが株主だ。社長はダイムラーから送り込まれているが、会長は松永和夫・元経産省事務次官が務め、それ以前には経産省自動車課長などを経て日本自動車工業会副会長・専務理事、中小企業基盤整備機構の理事長などを歴任した鈴木孝男氏が務めていたこともある。

 経産省のビッグネームが役員として入り込んでおり、経産省マターとして「商用車再編」が進められる可能性が否定できないのだ。

 いずれにしても、日野自の大幅赤字をいつ解消できるか、トヨタが最終的にどのように対応するのか、経産省が商用車再編を仕掛けにバックから動くのかといった視点があり、来年には何らかの動きが表れてくるだろう。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)