JR東日本の長期債務が急増
金利上昇で懸念されるリスク
着実に「アフターコロナ」の足固めを進める各社だが、コロナの影響は損益計算書にとどまらない。もう一つ注目すべきは、コロナ禍で生じた巨額の赤字を埋めるために調達した資金のその後である。計5000億円の短期社債を発行し、2023年度までに償還したJR東海は例外として、JR西日本の負債は対2019年度同期で約3966億円、約2割増の2兆3742億円となった。
さらに厳しいのはJR東日本だ。今期末時点で社債が約1兆4536億円、長期借入金が約2671億円、負債全体で1兆7140億円(同45.3%)も増加した。コロナ前に約3.1兆円まで減少していた長期債務は、2000年頃と同水準の4.8兆円に戻ってしまった。
当時とは平均金利が異なるため単純比較はできないが、金利上昇が進みつつある中、膨れ上がった債務は経営のリスクとなる。また、高輪ゲートウェイを始めとする不動産への積極投資が大きいため、フリーキャッシュフローがほとんどないことも気になるところだ。
これについてJR東日本は中間決算説明資料で、(1)キャッシュ・フローに応じた有利子負債のコントロールによる財務健全性の着実な回復、(2)支払金利の固定化や調達年限の長期化による将来の金利上昇リスク抑制、(3)年度ごとの有利子負債償還額の平準化により将来の借り換えリスク抑制を挙げている。
同社は決算発表にあわせて、2026年3月の運賃改定を目指して国土交通省に運賃改定認可申請を行う方針を表明した。また11月6日には2025年春から2030年頃にかけて首都圏主要線区でワンマン運転を開始すると発表。鉄道事業の収益性回復に本腰を入れる構えだ。