自民党議員から内容証明が届くと、私は訴訟の準備もあるので、被害者の方からさらなる証言を得ようと会わせてくれ、とライターさんにお願いした。しかし、やはり性加害で心の傷が癒えていないということで、性加害の実態を知るご家族の方が代理でやってきたのである。
そこでこの人から事情を聞いたのだが、どうもいろいろと話の辻褄が合わない。そこで、さらに突っ込んで話を聞いていくと、実は被害者の方が性加害を受けた事実はないという。両者に性的な関係があったようだが、そのエピソードを大袈裟に盛ってしまったという。
なぜそんなことをしたのかというと、ご家族の方が、自民党議員とトラブルを抱えていて、政治家としての信用をおとしめたかったからだという。ネット掲示板に悪口を書き込むようなノリで、知人に語っていたら、それを有名ジャーナリストがかぎつけ、引っ込みがつかなくなってしまったというのである。
この事実を突き止めた筆者はすぐに自民党議員と和解し、雑誌に謝罪広告を載せた。しかし、大手週刊誌の方はまだ気づいていないのか、今さら引くに引けなかったのかわからないが、この自民党議員と長きにわたる法廷闘争を続けて結局、負けていた。
これは個人的な体験だが、似たような話はこの世界に山ほどある。ただ、断っておくが、週刊誌などデタラメばかりなどと言いたいわけではない。
テレビ、新聞、週刊誌といろいろなメディアで働いてきたが、週刊誌記者は皆さんが思っている以上に、深い取材をしているし、事実確認に時間をかけている。特に文春などは他誌を圧倒するほどの人員や時間をかけて「裏取り」をしている。
ただ、そこまでしっかりと取材をしても、「性加害の被害者の証言」の裏を取ることは難しい。当たり前だ。密室で起きていることなので、動画や音声もない。暴行を受けたということならば、傷の写真や診断書が有力な証拠になるが、数年前の性行為についての強制性を確かめる術はない。
そうなると、「被害者を信じる」ということしかない。これが週刊誌が性加害を扱うことの限界であり、問題である。