鈴木俊宏社長はスズキの業績について、「全体に稼ぐ力が付いてきていること、収益改善策が動き出した感触を持っている」と、“稼ぐ力”が向上したことを強調する。

 実際、それは数値を見ても明らかだ。上半期の営業利益率は11.7%と高水準。同期間における営業利益率は、トヨタが10.6%、ホンダが6.9%、日産自動車が0.5%であり、トヨタをも上回る高収益体質となっているのだ。

 この差にある背景の一つが、中国市場の有無だ。そもそもトヨタ、ホンダ、日産が苦戦している大きな要因には、中国市場での販売競争激化があるが、スズキは18年に中国市場からは早々と撤退している。さらに、販売奨励金(インセンティブ)などが重荷となっている米国も、マリン事業を除いて中国以前に撤退していることが大きい。

 だが、それに加えて、今回の決算では日本国内での増販と収益力向上が業績に寄与したことが大きい。

 スズキといえば、インド市場が大きな成長要因だと考える人もいるだろう。実際、それは間違っておらず、先代の鈴木修元会長による独自のグローバル戦略で、早期にインドで生産・販売の基盤を固めたことで、他のメーカーの追随を許さないトップシェアと、巨大な生産拠点を有している。スズキのグローバル戦略は、いずれ中国を抜いて世界最大の市場となり得るインドを世界戦略の基地として集中投資する、独自のものなのだ。

 だが、この上半期で見ると、インドでの販売は86万1000台で前年同期比3.1%減の足踏み状態となった。鈴木俊宏社長は「インド市場で小排気量車が弱含みで推移したことと、在庫の適正レベルへの調整もあった」と、インド市場の停滞感を示した。

 これをカバーしたのが、実は日本市場だ。国内販売では34万3000台、前年同期比9.7%増と大きく増加している。安定した生産と新車投入に加え、利益面では値上げ効果が寄与した。

 そもそも、スズキは日本市場で、トヨタに次ぐ販売台数シェア2位の座を確保しており、軽自動車と共にA・Bセグメントの小型車でも存在感を強めている。24年4~9月の軽自動車車種別の販売台数では、2位「スペーシア」、4位「ハスラー」、5位「ワゴンR」、6位「アルト」と、ベスト10に4車種がランクインし、今年も軽自動車での年間トップシェアの獲得がほぼ確実となっている。また、小型車では新型「スイフト」が「2025年次RJCカーオブザイヤー」を受賞する栄誉に輝いている。