加えて10月に国内市場に投入した、インド生産の新型コンパクトSUV(スポーツタイプ多目的車)「フロンクス」も好評で、10月中に1万台の受注と好スタートを切った。多様な商品を背景に、メーカー・販売店一体で収益力を向上させたことが、好業績につながった。この「フロンクス」は、「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」の上位10台の「10ベストカー」に選出されている。

 上半期に好調だったのは日本だけではない。欧州・パキスタンのほか、中南米・アフリカ・中近東の各市場でも販売を伸ばしており、グローバル戦略も順調だった。

 さらに、もともとスズキは、四輪事業よりも二輪事業の低収益性が課題で、鈴木修社長時代に赤字体質脱却を進めてきたが、上半期の二輪事業の営業利益は227億円(前年同期比44%増)、営業利益率11.4%で増収増益となった。黒字体質化が進み、こちらも業績に貢献した。なお、四輪事業の上半期の営業利益は2934億円(同42%増)で、営業利益率11.3%だった。

 スズキの業績におけるインドへの依存度は高まってきたが、実は日本国内での販売台数・収益向上をはじめ、世界各地域での伸びが進んでいるほか、二輪事業、マリン事業の成長もあるなど、「インド一本足打法」とは言い切れない、バランスの取れた収益構造に近づいている点には、しっかりと注目するべきだ。

俊宏社長就任から10年
円熟味が増した経営体制

 さて、かつての鈴木修元会長の“ワンマン”体制から移行し、鈴木俊宏社長が就任したのが15年6月のことだ。21年6月には修元会長が相談役に就任し経営第一線から引いたことで、名実共に“脱・修”となり、俊宏体制に移行した。

 それから3年、今年6月の株主総会では俊宏体制を支える新役員体制に切り替えた。取締役には、俊宏社長の右腕である参謀役の石井直己副社長(トヨタ出身でトヨタのインド現地法人の社長などを歴任)のほか、新任の加藤勝弘専務 (技術担当)、鳥居重利専務(品質・生産・調達担当)、岡島有孝常務(渉外広報本部長・東京支店長)に加え、社外取締役3人が就任。これに、グローバル営業を統括する鮎川堅一副社長が左腕の形で俊宏社長を支える体制となった。また、今年の4月からは、人事制度改革を実施し、各部門でスキル向上などの取り組みを開始している。