米国と中国の悪化でコストカット不可避に

 24年7~9月期の業績で、日産は赤字に陥った。主な市場ごとの状況を見ると、米国市場では日産車の販売価格が下落している。米国ではEVシフトの鈍化などを背景に、HVに需要が集まったが、日産はHVを十分に展開できていない。人気の下落を販売奨励金で補おうとした結果、コストが増加し収益性は悪化した。

 ゴーン時代に重視した中国市場では、BYD、ウーリン、理想汽車など中国EVメーカーが台頭し、電動車の普及が加速した。中国政府のEV販売補助金に加え、過剰生産能力で企業間の値引き競争も激化し、消費者は中国企業のEVを選好した。日産は価格競争で勝つことが難しく、江蘇省の工場での生産を停止せざるを得なくなった。

 また、日本国内の新車販売市場、欧州市場、中国以外の新興国市場でも、日産の事業戦略は苦戦が続いている。

 業績の悪化が続けば、財務内容は劣化し経営体力も低下する。11月7日、日産は目先のコストカットのため、大規模なリストラ策を発表した。グローバルに生産能力を20%削減し、約9000人の人員削減を実施する。

 9月末時点で、日産の連結従業員数は13万3580人であり、約7%の従業員を削減する計画だ。資産売却の一環で、三菱自動車の持ち株34%のうち10%を売却する方針もある。

 日産の新たな経営計画(「The Arc」)によると、経営陣は既存の車種を削減する一方、ホンダなど国内外の自動車メーカーとの提携を増やそうとしている。EVなどではユニット組み立て型の製造方式で生産コストを抑え、新しいモデルを増やして業績の反転を目指すのが、新計画の骨子である。

 日産が、経営再建に向けてリストラするのは今回が初めてではない。ゴーン事件以降では、新興国向けブランド「ダットサン」の生産を終了し、工場を閉鎖した。グローバル生産能力は直近で、500万台程度に削減されたとみられる。こうしたコストカットを進め研究開発の資金を確保したはずだった。が、実際に世界の消費者の支持を取り付けるには、まだ至っていない。