急激な業績悪化にさいなまれている日産自動車に、また一つ大きな試練が訪れている。投資先企業に強硬姿勢で臨むアクティビスト(物言う株主)から狙い撃ちされているのだ。すでに旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントによる日産株の保有が明るみになっているが、日産を標的にしたのはエフィッシモだけではなかった。今回、ダイヤモンド編集部の取材により「別の物言う株主」が浮上していることが分かった。アクティビストの参戦で、日産経営陣による壮絶なリストラ実行は待ったなしとなろう。アクティビストが群がった“意外な理由”を解説すると共に、盟友ホンダによる救済統合の可能性を大胆に予想する。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
エフィッシモだけじゃなかった!
日産がアクティビストに狙われた「真相」
11月12日、日産自動車の株価が急騰し、一時は前日比21%高となる444円を付けた。
その前日、日産が関東財務局に提出した半期報告書において、大株主として旧村上ファンド出身者が在籍するエフィッシモ・キャピタル・マネージメント系のファンド名の記載が表面化した(ファンド名は、サンテラ(ケイマン)リミテッド アズ トラスティ オブ イーシーエム マスターファンド。保有比率は2.5%)。
エフィッシモは、投資先企業に対して積極的な株主提案を行うアクティビスト(物言う株主)である。9月末時点で、日産の上場子会社である日産車体の株式29.68%も保有している。アクティビストの登場をきっかけに日産のガバナンス改革が進むのではないかとの思惑買いが先行し、株価が高騰したのだ。
国内産業界でエフィッシモの存在感を見せ付けることになったのは、東芝でのケースだ。2021年に、エフィッシモが定時株主総会の公正な運営を問うた株主提案を行ったところ、東芝のような大企業では珍しく株主提案が可決され、東芝経営陣にノーが突きつけられたのだった。結果的に23年、エフィッシモは株式公開買い付け(TOB)に応じて巨額のキャピタルゲインを手中に収めることになった。
ここにきてエフィッシモとは「別のアクティビスト」も日産株を保有していることが、ダイヤモンド編集部の取材により明らかになった。
香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントがそうだ。エフィッシモと同様で、投資先企業に対してアグレッシブな株主提案を行うことで知られている。あるファンド関係者によれば、「オアシスが日産株を保有したのはエフィッシモより前のこと。保有比率は(大量保有報告書などに報告義務が生じるほど)高いわけではない」という。
最近では、オアシスはドラッグストアのツルハホールディングス(HD)の筆頭株主となり、イオン子会社のウエルシアHDとの統合劇ではキャスチングボートを握った。さらにセブン&アイHDを大株主とするアインHDの株式も保有。ドラッグストア業界の再編を睨み、投資先ポートフォリオを組み替えている模様だ。
エフィッシモとオアシス。時を同じくして、日産にアクティビストが群がっているのはなぜなのか。
11月7日、日産は25年3月期第2四半期(4〜9月)に、営業利益が前年同期比90%減に落ち込む“業界で独り負け”の決算を発表したばかり。当然のことなが株価のパフォーマンスは振るわず、株価純資産倍率(PBR)は、企業の解散価値である1倍を割り込むどころか0.26倍まで落ち込んでいる。アクティビストにとって、格好の攻撃対象となる悲惨なレベルだ。
今後、アクティビストが自社株買いや増配などの株主還元策を提案したり、無駄な資産を削ぎ落とし資本効率向上を求めたりといった局面が出てくるだろう。
ただし、標的となった理由はそれだけではない。アクティビストにとって、日産には「美味しいメリット」が二つあることも忘れてはならない。
次ページでは、アクティビストが群がった「意外な理由」を明らかにすると共に、協業関係を結ぶホンダによる救済統合の可能性や再建プランの行方について、大胆に予想する。