「女権主義者だ」「男性差別だ」インテルが炎上

 一方でそんな彼女の女性ファンにおける絶大な人気に目をつけた米インテルは、2021年、IT機器の男性性を和らげようと、彼女を中国市場のイメージキャラクターに採用した。そのCM動画の中で彼女は、「さすがインテル、お目が高い。わたしのパートナー選びよりいい目のつけどころだわ」と、「楊笠路線」継続とも思えるセリフを呟いた。

スタンダップコメディエンヌの楊笠(ヤン・リー)さんスタンダップコメディエンヌの楊笠(ヤン・リー)さん Photo:VCG/gettyimages

 これが、前回の彼女のジョークに激怒した男たちに火をつけ、再び彼女とインテルへの攻撃を巻き起こした。「なにが目のつけどころだ。あいつに価値なんか分かるはずがない」といった発言や、「女なんかに電子製品が理解できるかよ」といった、それこそ差別意識丸出しの発言も大量にネットに跋扈した。

 楊さんは本当に「女権主義者」なのか? 実のところ、こうした公の場で芸人としての発言以外に彼女が女権活動家的な発言をするのは目にしたことがない。逆に、楊さんを有名にした「普通男」発言も、またそれに便乗した上から目線のコピーも、楊さん自身の本意ではなく、文字通り計算されたウケ狙いだったという説もある。

 だが、男たちが蜂の巣をつついたように大騒ぎし、必死になってキーボードを叩いて「男の尊厳」を守ろうと攻撃を繰り返す姿には、逆に楊さんと彼女を支持する女性たちが指摘する「笑いのポイント」そのものが透けて見えてくるのも事実だった。

 しかし、インテルの中国SNS公式アカウントには2万件を超える批判コメントが殺到し、あまりの炎上ぶりに慌てたインテルは、すぐに楊さんの動画をネットから削除し、ユーザーに対して謝罪して収束を図った。