出力の柔軟な調整は不得意ではあるものの、稼働時に温暖化ガスを排出しないベースロード電源の選択肢は今のところ原子力発電しか見当たらない。
広大な土地を使う割には
再エネの発電量は小さい
太陽光発電や風力発電のもう1つの課題が、広い設置面積を必要とする割に、発電出力が小さいことだ。実際の発電所で比較してみよう。
2018年に稼働した日本最大級の太陽光発電所「瀬戸内 Kirei太陽光発電所」。約260ヘクタール(東京ドーム56個分)の敷地で、最大電気出力235メガワットを生み出す。一般家庭約8万世帯分に相当する規模だ。
風力発電も、広い設置面積が必要なのは同じだ。2020年に稼働した「ウィンドファームつがる」(青森県つがる市)は、陸上風力発電所として国内最大規模を誇る。長さ約50メートルのブレード(羽根)を備えた風力発電機38基を設置して、総出力121.6メガワットの電力を生み出す。同発電所の敷地は広大で、その風力発電機は、青森県の日本海側の海岸、およそ南北10キロメートルの範囲に点在している。
こうした大規模な太陽光発電や風力発電は、導入コストの低減やFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)に支えられ、全国で普及が進んできた。ところが、先に例として挙げた太陽光発電所と風力発電所の電気出力は、どちらも、火力発電所や原子力発電所1基あたりの電気出力に満たない。
例えば、2020年に運転を開始した電源開発の竹原火力発電所(広島県竹原市)の新1号機は、単体で600メガワットの最大出力がある。敷地内の他の発電機と合わせた最大出力は合計1.3ギガワットに上る。
一方、郊外緑地を含む同発電所の敷地面積は約40.8ヘクタール(約40万8000平方メートル)に過ぎない。前出の太陽光発電所が、最大の電気出力235メガワットで敷地面積260ヘクタールだったのを思い出してほしい。