同社は原子力大手の米GE日立ニュークリア・エナジーと組み、新型原子炉の1つである高速炉(FR)を開発する。2024年6月には2030年の稼働を目指して、米ワイオミング州でナトリウム冷却高速炉「ナトリウム(Natrium)」の実証炉の建設を始めた。
IT業界の巨人たちは増大する電力需要を自らの商機と考え、核エネルギーを前向きに捉えている。
「電化電化!」の大合唱に
トヨタ会長は「だったら原発を」
カーボンニュートラルの達成に原子力発電のような脱炭素電源の確保が不可欠であることを国内で知らしめた出来事がある。
日本政府が発表した「2050年にカーボンニュートラルを達成する」との方針に関連して、日本自動車工業会(JAMA)の豊田章男会長(当時)が2020年12月に開いた記者会見だ。
豊田氏は、国内全ての乗用車を電池とモーターだけで走る電気自動車(BEV)に置き換えた場合、夏の電力ピーク時に電力不足が発生する可能性があると指摘。国内の発電能力を10~15%増やす必要があり、原子力発電であれば10基、火力発電であれば20基を増設する規模であるとして物議を醸した。
自動車産業では、化石燃料を直接燃やすエンジン車から電気自動車(BEV)を含む電動車への移行が始まっている。
製造業の中でも特に温暖化ガスの排出量が多い鉄鋼業では、石炭を使った製鉄プロセスである高炉から、電気で鉄を造る電炉への転換を目指す動きが活発化している。
このような「電化」は、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温暖化ガスの排出削減に効果があるとされる。
しかし、その電気の発電で火力発電に頼るのであれば、カーボンニュートラルの理想からは遠ざかってしまう。電化を進めるにあたっては、温暖化ガスの排出が少ない電源を並行して増すことが重要な課題だ。
当時の豊田氏の発言は、電気自動車(BEV)だけが自動車の未来であるかのように報道する当時のメディアの論調に異論を唱える意図で、必ずしも原子力発電所の増設を主張したわけではない。とはいえ、図らずも温暖化対策が一筋縄ではいかない規模の課題であることや、温暖化ガスの排出削減に核エネルギーが有効であると、改めて世間が知るきっかけとなった。