薄毛治療を受ける
医療機関の選び方は?

 内服薬や外用薬で思ったような効果が得られなかったり、すでに脱毛が進行していたりするケースには、「自毛植毛」という選択肢もある。

「脱毛が進行した人でも、男性ホルモンの影響を受けにくい後頭部の毛は残っているので、そこから自分の毛を抜き取り、薄くなった部分に移植する方法です。実施している医療機関が限られ、移植部分が広範囲だと50万~100万円くらいかかることもあるのが難点ですが、日本の自毛植毛のレベルは非常に高いので、脱毛が進行してしまった人にはお勧めの治療です。女性でも自毛植毛はできるので、外用薬が効かないか、かぶれなどの副作用が出た人は、植毛を検討してみてもよいかもしれません」

 一方で、東邦大学医療センター大橋病院が2024年7月からスタートした「毛髪再生医療」も注目されている。脱毛していない後頭部の頭皮から毛球部毛根鞘細胞(もうきゅうぶこうもんしょうさいぼう)を採取し、その細胞を体外で培養して増やして脱毛部に注入する治療だ。

 臨床試験の12カ月後の外観写真判定の結果では、「改善」が女性38.9%、男性20.6%、「変化なし」が女性36.1%、男性20.6%で、女性の方が効果は大きかった。保険がきかない治療なので費用は約150万~約370万円と高額だが、薄毛治療の選択肢が増えた恩恵は大きい。

 ただ、薄毛になる原因は男性型脱毛症や女性型脱毛症だけではない。甲状腺の病気や膠原病、糖尿病などで薄毛の症状が出ることもある。また、男性型脱毛症ではなく円形脱毛症の場合には治療法が異なる。

「薄毛が気になるときには、日本皮膚科学会の専門医のいる医療機関を受診しましょう。オンライン診療で薬を出すところもありますが、患者さんの髪の毛や頭皮を触診し、頭皮をダーモスコピーという拡大鏡で観察しないと正確な診断はできません。最初の診断は皮膚科専門医の対面診療で受け、治療方針が決まったら、近所の皮膚科やかかりつけ医師などで定期的に薬を処方してもらうようにしてもいいと思います」

 皮膚科専門医の情報は、日本皮膚科学会のホームページで市区町村別に調べられる。

(監修/浜松医科大学医学部附属病院皮膚科病院教授 伊藤泰介)