頭頂部と前髪に“異変”を感じたら、真っ先にやるべきこと【薄毛の専門家が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

「前髪が後退してきた気がする」「頭頂部の毛が薄くなってきた」――薄毛が気になる男性に朗報だ。男性の薄毛の原因の多くを占める男性型脱毛症(AGA)の9割以上は、内服薬などで治療できる時代になってきた。しかし、ネット上や広告などには、真実ではない怪しい情報もあふれている。何が本当なのか、脱毛症の専門医に話を聞いた。(取材・文/医療ライター 福島安紀)

細くて短い抜け毛が増えたら
薄毛のサインかも

 男性型脱毛症は、生え際の前頭部や頭頂部の髪が細く短くなり、やがて生えなくなる現象だ。男性型脱毛症によって薄毛になる人は、日本人男性の場合20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降は約40数%とされる。

 髪の毛は周期的に生え変わっており、健康な人でも1日70~100本程度は髪が抜けている。

「抜け毛や、加齢とともに髪の毛が細くなるのは普通の生理現象です。薄毛になると、通常は2~6年かけて髪が伸びる成長期が、数カ月~1年と短くなり、髪が短くて細いうちに抜けてしまいます。細くて短い抜け毛が増えたら薄毛のサインかもしれません。治療するかどうかは自由ですが、自己肯定感の低下につながることがあるので、薄毛が気になる男性は、皮膚科で診断・治療を受けてみるとよいのではないでしょうか」

 そう説明するのは、脱毛症が専門で、浜松医科大学医学部附属病院皮膚科病院教授の伊藤泰介先生だ。男性型脱毛症の治療は、日本皮膚科学会が「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」を作成し、標準化している。

「発行から7年たっていますが、現在でも男性型脱毛症に対して『行うように強く勧める』推奨度Aの治療は、飲み薬のデュタステリドとフィナステリドの2つであることは変わっていません。薄毛の男性の場合、どちらかの薬を1日1回服用することで、99%の人は効果が期待できます。そのうち7割程度の人は髪の毛が増え、3割くらいの人は現状維持、つまり薄毛の進行がほぼ止まり、1%の人は悪化します」

 デュタステリドとフィナステリドは、男性ホルモンを強化する5α還元酵素というタンパク質の働きを阻害して男性型脱毛症の進行を抑える薬だ。薄毛と関係がある5α還元酵素には1型と2型の2種類があり、フィナステリドは2型のみ、デュタステリドは両方の働きを抑える作用がある。